贈与・相続・事業承継

どなたにもいつかは亡くなる日が訪れます。その時に、残されたご家族が様々な問題で(財産の分け方や相続税の問題など)困らないように、様々な視点から大切なご家族を将来の不安から守るためのヒントを発信していきます。

相続不動産の登録義務化へ

 相続で不動産を取得した人に名義変更登記を義務付けた改正法が来年4月1日に施行されることをご存じでしょうか。不動産を相続しているにもかかわらず、登録を怠っていると10万円以下の過料となります。

 登記義務化の背景には、国内に数多く存在する所有者不明の土地・建物が有効活用されないばかりか、放置されていることで周辺環境に悪影響を及ぼしていることがあります。

 適用されるのは来年4月以降の相続だけでなく、過去に相続して相続登記されていない不動産も対象となることに注意が必要です。登記期限は、相続の開始及び所有権を取得したことを知った日、または、来年4月1日のいずれか遅い日から3年以内です。

 しかし、複数いる相続人の対立や、行方不明の相続人がいたりすることで、遺産分割協議が成立せずに誰が不動産を取得するか決まらないことがあります。こうした場合も、何も手を打たないと過料を課される可能性があります。

 これを回避するため、「相続人申告登記」という制度が新たに設けられます。相続が開始したことと、自分が相続人であることを個々に法務局に申請し、戸籍謄本を提出します。

 また、相続で取得した土地を手放す「相続土地国庫帰属制度」も設けられました。すべてを相続放棄するわけでなく管理の難しい土地だけを手放せるのですが、「更地で他人に利用されていない土地」が対象で、1筆当たり1万4千円の審査手数料と20万円の負担金が必要です。

 相続登記には固定資産税評価額の0.4%の登録免許税や、専門家に手続きを依頼する場合にはその報酬が別途必要になります。相続人にとっては負担がありますが、登記すれば売却が可能となり、不動産の有効活用につながります。

 相続する財産に不動産が含まれる場合、相続人同士で利用方法や処分について早めに話し合う必要があります。

2023年(令和5年)8月8日(火曜日) 北海道新聞 おうちの経済 掲載

子や孫への一括贈与

 厚生労働省は2月、2022年の出生数が初めて80万人を割り込んだと発表しました。日本では急速に少子化が進んでいます。背景には新型コロナウイルスの感染拡大で結婚、妊娠や出産をためらう人が増えたこともありますが、若い世代の経済的不安や、子育てにかかる負担が大きいことも理由となっています。

 若い世代の経済的負担を減らすためには、親や祖父母からの資金援助という方法があります。毎年110万円までなら非課税で贈与できますが、それ以外にも「結婚・子育て資金」や「教育資金」、「住宅取得資金」であれば非課税で一括贈与できます。

 この「一括贈与非課税制度」はそれぞれ上限額が決まっていて、結婚・子育て資金は1千万円(うち結婚関係は300万円まで)、教育資金は1500万円(うち習い事などは500万円まで)です。住宅取得資金については、取得する住宅が省エネなどの住宅の場合、1千万円(その他の住宅は500万円)までとなっています。

 期限は住宅取得資金が23年12月末までです。他の二つは23年度の税制改正で期限が延び、結婚・子育て資金は25年3月末、教育資金は26年3月末まで延長されることになりました。

 注意点として、住宅取得資金の贈与は贈与の翌年3月15日までに住宅購入資金に充て、入居した上で確定申告する必要があります。

 結婚・子育て資金や教育資金は、お金をもらう側(受贈者)が一定の年齢に達した時に使い残しがあると、残高に贈与税がかかります。あげる側(贈与者)が亡くなった際、使い残しの残高があると要件により相続財産に加算されます。

 あげる側に無理がなく、もらう側が使い切れる金額にすることがポイントです。制度の詳細は近くの税務署や国税庁のウェブサイトで確認してください。

 

2023年(令和5年)3月21日(火曜日) 北海道新聞 おうちの経済 掲載

空き家の実家を相続、どうすれば?

 少子高齢化に伴い、道内を含めて全国的に空き家が増えています。2018年の国の住宅・土地統計調査によると道内の空き家戸数は37万9800戸、住宅総数に占める割合は13.5%となっています。また、道内で65歳以上の人だけが住む一戸建て住宅(いわゆる「空き家予備軍」)は 43万100戸で、20年前と比較して約2.3倍となっており、今後も増加傾向にあります。

 空き家となった実家を相続した場合、放置するとますます老朽化が進み、売却や賃貸が難しくなります。また、家が倒壊の危険や衛生上問題のある状態になると、15年に施行された空き家対策特別措置法の「特定空き家」に指定される可能性があります。その場合、固定資産税の軽減措置が適用されなくなり、自治体から撤去や修繕命令が出されることもあり得ます。そうならないように、空き家を今後どうするかを早めに考えて行動すると良いでしょう。

 自分が住む予定ならリフォームを検討します。売却するなら、まずは複数の不動産会社に連絡することで価格の相場を知ることができます。家財の処分も含めて相談してみましょう。相続した空き家を23年12月末までに売却した場合は3千万円の特別控除が受けられます。ただし、物件には1981年5月末までに建築した一戸建てなどの要件があります。

 賃貸するならリフォームが必要ですが、家賃収入があれば自分の老後生活資金の足しになりますので、検討する価値はあります。

 道が2016年に開設した「北海道空き家情報バンク」は道外からのアクセス数が増えています。コロナ禍の影響でリモートワークが増えたことも利用者増につながっているようです。 空き家を売却・活用したいと考えている方は登録してみてはいかがでしょうか

2022年(令和4年)7月26日(火曜日) 北海道新聞 おうちの経済 掲載