家庭・家計に関する様々な時事問題について、より知識を深めるためのヒントを発信します。
キャッシュレス決済の手段は日々進化しています。現金を使う機会が減る中、安全で便利な決済方法を知っておくことが大切です。最近の主な変更点として、クレジットカード決済の署名廃止、税金のキャッシュレス支払いの拡大、銀行のキャッシュカードとデビットカードの一体化が挙げられます。
まず、クレジットカード決済では、これまで一定額を越える場合などに暗証番号の入力か署名のどちらかを選択することができましたが、4月からは署名は原則廃止となりました。決済時には暗証番号の入力が必要となるため、忘れている方は確認が必要です。また、一定の限度額以下であればタッチ決済(決済端末にカードをかざすだけで支払いが完了する方法)を利用できる店舗が増えており、利便性が増しています。
次に、税金の支払いもキャッシュレス化が進んでいます。固定資産税や自動車税などは、これまで銀行やコンビニでの現金払いが一般的でしたが、クレジットカード払いやスマートフォン決済アプリを利用して自宅からでも支払えるようになりました。特に、クレジットカードで 支払うとポイントが貯まることもあるため、活用することで家計の節約にもつながる可能性があります。ただし、決済手数料がかかるため、得られるポイントとの比較が必要になります。
また、銀行のキャッシュカードとデビットカードの一体化が徐々に進んでいます。従来のキャッシュカードはATMでの現金引き出しが主な機能でしたが、デビットカードはクレジットカードのように買い物ができる一方で、銀行口座から直接お金が引き落とされる仕組みなので、 残高の範囲内でしか使うことができず、使いすぎを防ぐことができる点も安心です。
キャッシュレス決済の進化に応じて、私たちは新しい仕組みに慣れることが必要ですが、使い方をしっかり理解し、安全に利用することで、日常の支払いをよりスムーズにすることができます。家族や周囲の人と情報を共有しながら、自分に合った決済方法を選んでいきましょう。
2025年(令和7年)4月15日(火曜日) 北海道新聞 掲載
成人式に向かう華やかな着物姿の若者を見かけると、「頑張れ」と応援したい気持ちになります。成人式は今でも20歳で行う自治体が多いようですが、現在は法律的には18歳で成人になります。
成人になるとどう変わるのでしょうか?飲酒やタバコは今まで通り20歳にならないと認められませんが、18歳からは成人として保護者の同意がなくても契約を行うことができるようになります。具体的には、自分でクレジットカードを作ったり、ローンを組んだり、携帯電話などを契約することが可能です。
未成年のうちは親の許可なく契約した場合、親が取り消すことができますが、成人になってからの契約では親が取り消すことはできません。まだ学生であまり金融の知識もないまま、お金が借りられるからと無計画にローンを組んでしまうと本人が返済で困ることになります。
そうならないためにも、日頃から家庭でお金の使い方や貯め方について話題にし、少しずつ家計管理について学べる環境を作ってあげることも大切です。
2025年(令和7年)1月13日(月曜日) 北海道新聞 掲載
金融サービスがテクノロジーと結びついて進化していくことをFintech(フィンテック)といいます。世界におけるフィンテックの広がりは目覚ましく、現在では多くの国々で現金の支払いよりもクレジットカードやQRコード(スマホ)決済などが主流になっています。
キャッシュレス推進協議会の発表したキャッシュレス・ロードマップ2023によると、日本のキャッシュレス決済比率が32.5%であるのに対し、韓国のキャッシュレス決済比率は95.3%、中国83.8%、米国53.2%となっており、海外のキャッシュレス化が進んでいるのが分かります。
なぜ海外と比較して日本のキャッシュレス決済が遅れているのでしょうか。日本には銀行の ATMやコンビニが多く存在することで現金の引き出しが容易であることと、他国と比べて高齢者の比率が高く、新しい技術に対して抵抗感があることなどが考えられます。
しかし、今後日本ではますます労働人口が減少し、会計や窓口業務にかかる負担を減らすことが必要であり、そのために金融サービスのデジタル化が急務となっています。
最近ではスーパーの無人レジが増え、JR北海道の特急券もインターネットで購入したほうが安く買える仕組みになりました。また、7月からは北海道銀行の振込手数料もインターネットバンキングを通したほうが大幅に有利になるように変更になります。
これからの時代、企業は人件費の負担を軽減し、コストを抑える取り組みをさらに進めるでしょう。私たちはキャッシュレス決済やインターネットの手続きに慣れていく必要があります。新しいことを覚えるのにハードルが高いと感じるようでしたら、家族や知り合いに手伝ってもらったり、地区センターなどで開催されているキャッシュレス決済講座やインターネット講座などに参加してみてはいかがでしょうか。
2024年(令和6年)6月4日(火曜日) 北海道新聞 おうちの経済 掲載
スマートフォンのアプリからバーコード読み取りなどで支払いをするスマホ決済。これを担う「資金移動業者」を介し、会社が電子マネーで給与を支払う「デジタル給与」が4月に解禁されました。
これまで労働基準法は、給与は労働者に現金で支払うと定め、会社と労働者が同意すれば金融機関の口座へ振り込むことも認められていました。デジタル給与の登場は、給与のあり方の大変革と言えるでしょう。厚生労働省は現在、資金移動業者の認定を進めているところで、実際に電子マネーで給与支給する会社が登場しているわけではありません。また、前提として労使協定と従業員の同意が必要です。
賃金を受け取る側からすると、一部のみデジタル払いにし、残りを銀行口座で受け取ることも可能です。普段からスマホ決済による買い物が多い人は、自らチャージする手間が省けるメリットがありますし、ポイント還元があれば、お得に使えることにもなります。
一方、賃金をデジタル払いで受け取ると、お金の管理が複雑になることが考えられます。デジタル口座の上限は100万円とされているため、それを超え額は指定している銀行口座に自動的に出金されるので、給与収入全体が把握しづらいのです。これでは、計画的にお金を使うことが難しくなる可能性があります。
指定資金移動業者が破綻した場合、保証機関から弁済を受けることができますが、自分の過失によって不正利用された場合は個別の対応となります。パスワードをきちんと保管するなど、自分でセキュリティーを高めておく必要があります。
デジタル給与を上手に管理するには、家計簿アプリを利用するとよいでしょう。アプリを銀行口座やデジタルマネーとひも付けることによって自動的に入出金が記録され、それぞれの残高も一元的に把握することができます。
2023年(令和5年)4月18日(火曜日) 北海道新聞 おうちの経済 掲載
マイナンバーカードを健康保険証とするマイナ保険証の登録をした人は今年1月29日時点で約4397万人です。国は4月から、全ての医療機関・薬局でマイナ保険証が利用できるようになるとしていますが、システム導入に時間がかかるため、実際には少し先になりそうです。
マイナ保険証利用促進のため、国は受診時の窓口負担を従来の保険証より少し低くしています。高額療養費制度に関して市町村や健保組合などが発行する限度額認定証がなくても窓口での支払額を抑えることができるようになりました。
さらに、確定申告での医療費控除の手続きでもメリットがあります。従来は原則「医療費除の明細書」を作成する必要がありましたが、国が運営する行政手続き情報サイト「マイナポータル」に登録して自分と家族の医療費情報を取得すれば、必要事項は自動入力されます。
マイナンバーカードを持っている人が保険証として登録するには、スマートフォンやパソコンを使ってネット経由で手続きするか、セブン銀行のATM、マイナ保険証が利用できる医療機関や薬局、市役所の住民向け端末を利用するなどの方法があります。いずれも登録自体はさほど難しくありません。
一方で、紛失の際の情報漏えいや再発行が心配されています。
デジタル庁は「カードのIC(集積回路)チップに医療情報は記載されていない。利用の際には顔写真で本人確認することが義務付けられているので不正利用にはつながりにくい」としています。
紛失については、24時間対応のフリーダイヤルで利用を一時停止することができます。現状、再発行の所要期間は1〜2カ月程度と短くありません。
現時点では、マイナ保険証を登録した後も従来の保険証を引き続き使用できますので、しっかり保管しておく方がよいでしょう。
2023年(令和5年)2月21日(火曜日) 北海道新聞 おうちの経済 掲載
「家族のかたち」が多様化するのに合わせて、そうした家族の暮らしを支える仕組みが求められています。
多様化とは、例えば男女どちらか一方の姓に合わせることに不都合が生じて事実婚(別姓婚)を選んだり、同性婚を選択することなどが挙げられます。しかし、法律婚(男女が法律上要求される手続きを踏んだ婚姻)とは異なり、こうしたケースでは、法定相続人になれない、配偶者控除も受けられないなど、さまざまな不利益が生じています。
それでも、多様性を受け入れようと、わたしたちの社会は少しずつ実務を変更しつつあります。道内では札幌、函館、帯広、北見、江別、苫小牧の6市がパートナーシップ宣誓制度を開始しています。また、岩見沢市も2月に施行する予定です。この宣誓書受領証があれば、同性パートナーを生命保険の受取人として認める生命保険会社が増えています。
長期固定金利の住宅ローン「フラット35」は、今月から同性パートナーも連帯債務で住宅ローンを組むことができるようになりました。パートナーのいずれかが死亡または高度障害になった場合に保険金が支払われてローンが残らない「夫婦連生団信」も利用できるようになりました。
ただ、法律が変わるまでにはまだしばらくかかりそうで、法律婚以外のカップルは万一の場合への備えが必要です。
例えばパートナーが亡くなった時、残された側が生活に困らないようにするにはどうすればいいでしょう。事実婚では、生計維持関係にあり事実上の婚姻関係にあったと住民票の記載などで証明できれば、遺族年金を受給できます。しかし、同性婚の場合は認められていませんので、互いに遺言書を準備しておく必要があります。
個々の生き方を尊重する寛容社会は、私たち一人一人が古い考えにとらわれずに制度や法律を手直ししていくことでできあがっていくと考えています。
2023年(令和5年)1月24日(火曜日) 北海道新聞 おうちの経済 掲載
「離婚の際にお金について何も取り決めなかったために、その後の生活が苦しくなった」という相談を受けることがあります。後悔しないためには、具体的にどんなことを話し合えばいいでしょうか。
扶養する子供がいる場合は、養育費について取り決めます。子供の数と父母の年収に応じた算定額を裁判所が公表していますので、これを基に話し合うといいでしょう。子供が成人するまでの取り決めが多いですが、今は大学への進学率も上がっていますので、卒業するまでの学費も考慮しなければなりません。養育費については口約束にせず、公正証書を作成してください。
また、離婚時の年金分割は2種類あります。一つは「3号分割」で、専業主婦(夫)など国民年金第3号被保険者だった方からの請求で行います。2008年4月1日以降の婚姻期間中の相手方の厚生年金記録を2分の1ずつ分ける方法で、相手の合意がなくても可能です。もう一つは 「合意分割」で、互いに合意するか裁判で決まった割合で、婚姻期間中の厚生年金記録を分割する方法です。請求期限はいずれも離婚してから2年以内となっています。
離婚時の財産分与でトラブルになりがちなのはマイホームの問題です。離婚時に一方が取得したとしても、ローンの返済が滞れば手放すことにもなりかねません。また、連帯保証人や連帯債務者になっている場合は離婚しても債務の責任が残りますので、現時点でのローンの残額や売却した場合の評価額なども合わせて調べておく必要があります。
相手に離婚の非がある場合は慰謝料を請求することができますが、一般的には100万〜300万円と多くはありません。離婚後の生活設計については自分でしっかり考えていくことが大切です。自分一人で解決できないと感じたら、FPや弁護士に相談してみてください。
2022年(令和4年)5月3日(火曜日) 北海道新聞 おうちの経済 掲載