資産運用

 

お金の育て方(資産形成)について、基本的な考え方や利用できる優遇制度、資産形成の効果などについてわかりやすく解説していきます。

 

 

株価乱高下時の資産運用

 8月5日の日経平均株価は終値3万1458円と前週末比で 4451円下落し、過去最大の下げ幅となりました。しかし、翌日には急回復し、値動きの荒さに資産運用は怖いと感じた人もいるでしょう。せっかく少額投資非課税制度(NISA)で資産形成を始めたものの、不安でやめてしまった人もいるかもしれません。

 経済指標の結果や金融政策の変更、地政学的な影響などにより、マーケット全体が大きく変動する可能性は常にあります。暴落がニュースで大きく報道されると、投資の経験が少ない方はどうしていいかわからなくなってしまいがちです。このようなタイミングで、私たちはどのような行動をとればよいのでしょうか。

 米国の有名な投資家ウォーレン・バフェット氏の言葉に「人が貪欲な時に恐れ、人が恐れているときに貪欲になれ」とあります。これは、株価が上昇して多くの人が投資している時よりも、株価が下がって人々が恐怖を感じるようなときこそ投資のチャンスがあるという意味です。とはいえ、投資のベテランでもタイミングを見計らうのは非常に難しいことです。

 一般の投資家である私たちに無理なくできることは、投資信託のように投資先が分散された 商品の毎月の積立を続けていくことです。決まった金額で毎月買い続けることによって、平均購入単価を平準化し、価格変動リスクを軽減できます。

 気を付けないといけないのは、リスクが大きくなりすぎる投資方法です。例えば信用取引や外国為替証拠金取引(FX)のように、自分が保有しているお金よりも多くの金額を投資できる方法がありますが、相場が大きく変動したときには資産を全て失いかねないほどの大きなリスクがあります。

 このようなリスクの高い投資を避け、NISAや個人型確定拠出年金(iDeCo)といった非課税で運用できる制度を上手に使い、長期目線で資産形成を続けると良いでしょう。

 

2024年(令和6年)9月3日(火曜日) 北海道新聞 おうちの経済 掲載

iDeCoのメリット

 老後資金の準備をしたいという相談者に対し、個人型確定拠出年金=iDeCo(イデコ)=をお勧めすることがあります。しかし「自分の年齢では掛けられる期間が少ないから」という理由でためらう方が多いようです。

 iDeCoは自分で投資信託や保険、定期預金の中から商品を選んで投資します。掛け金は全額所得控除の対象となるのが魅力ですが、以前は加入可能年齢が60歳まででした。

 2022年5月から、会社員として働き続けたり、任意で国民年金保険料を払い続けたりしている場合、加入可能年齢は65歳まで引き上げられました。受け取りを開始する年齢も60〜70歳だったのが60〜75歳に拡大され、遅く始めても比較的長期で運用できます。

 掛け金に対する所得控除では、例えば年収500万円の会社員の場合、毎月1万5千円の掛け金では年間節税額は3万6千円です。15年間だと、合計54万円にもなります。

 毎月の掛け金の上限額は職業によって異なります。自営業やフリーランスは月額6万8千円、専業主婦は2万3千円、公務員は1万2千円、会社員は企業年金などの条件により1万2千〜2万3千円です。

 運用益に対して非課税であることや、受取時にも税優遇があることも大きなメリットです。

 一時金で受け取れば退職所得控除、年金で受け取れば公的年金等控除が受けられます。

 デメリットもあります。老後資金を準備するための制度だけに、60歳になるまで資金を引き出せません。口座開設時、運用時、受取時のそれぞれで、手数料がかかる点にも注意する必要があります。年金受け取りにすると、毎回数百円の手数料が引かれることになるのです。

 「何歳まで掛けるか」「いつから受け取るか」「一時金として受け取るか、年金として受け取るか」など、今後の働き方と合わせてiDeCoの利用を考えてみてはどうでしょうか。

 

2023年(令和5年)6月13日(火曜日) 北海道新聞 おうちの経済 掲載